岩波叢書「グローバル関係学」シリーズ刊行開始記念Book Launch Series 4 「第五巻『「みえない関係性」をみせる』を語る」開催のお知らせ (11月05日配信)

岩波叢書「グローバル関係学」シリーズ刊行開始記念Book Launch Series 4
第五巻『「みえない関係性」をみせる』を語る

 新学術領域研究「グローバル関係学」は、今年プロジェクトの最終年度を迎えました。今年9月以降、その研究成果を、岩波書店から「グローバル関係学」叢書シリーズとして全七巻を刊行しております。11月には、シリーズ四冊目として、第五巻『「みえない関係性」をみせる』(福田宏・後藤絵美編)が刊行されました。この巻では、グローバルな状況の多様なアクターによって生まれる「みえない関係性」を、装い・音楽・サッカー・言語表現といった「シンボル」に着目しつつが浮かびあがらせていくことを目指しました。
 刊行を記念して、執筆者がオンラインでの報告会を実施します。さらに、コメンテーターとして中野嘉子先生(香港大学)と藤原辰史先生(京都大学)をお迎えし、コメントをいただきます。ぜひ、多くの方々のご参加をお待ちしております。
 目次、内容については、岩波書店HP https://www.iwanami.co.jp/book/b539112.html をご覧ください)

開催日時:2020年12月12日(土)14:00~16:00
開催場所:Zoomによるオンライン開催

司会:後藤絵美(東京大学・第五巻編集)
開会の挨拶 福田宏 (成城大学・第五巻編集)
報告

  1. 福田宏(序章 「みえない関係性」をみせる――装い・音楽・スポーツ、そして言葉)
  2. 森理恵(第1章 「キモノ」表象の民族主義と帝国主義)
  3. 帯谷知可(第2章 ウズベク人はいかに装うべきか――ポストソ連時代のナショナルなドレス・コード)
  4. 劉玲芳(コラム1 近代における男性服の日中交流――長袍馬褂と学生服)
  5. 山崎信一(第4章 「ユーゴスラヴィア」の担い手としてのロック音楽)
  6. 山本薫(第5章 中東のラップをめぐる力学とアイデンティティ形成――DAMの事例を中心に)
  7. 細田晴子(第6章 フランコ独裁とサッカーという磁場――現在に繋がるローカルでグローバルなサッカー)
  8. 後藤絵美(第8章 言葉が動くとき――「セクシュアル・ハラスメント」の誕生、輸入、翻訳)

討論者

中野嘉子先生(香港大学:主著書に『同じ釜の飯: ナショナル炊飯器は人口六八〇万の香港でなぜ八〇〇万台売れたか』『Where There Are Asians, There Are Rice Cookers: How “National” Went Global via Hong Kong』)

藤原辰史先生(京都大学:主著書に『トラクターの世界史』『分解の哲学』)

参加登録:以下のURLから参加登録をお願い申し上げます(12月10日まで)。
開催期日が近づきましたら,登録者の皆さま宛てにURLなどを通知します。

岩波叢書「グローバル関係学」シリーズ刊行開始記念 Book Launch Series 4 参加登録
 https://forms.gle/Vh9Tfwmc7fHAYfKMA

問合せ: 千葉大学グローバル関係融合研究センター
Email: glblcrss*chiba -u.jp(*を@に代えてご利用ください)

「グローバル関係学」シリーズ刊行にあたって~
「グローバル関係学」とは

酒井啓子

 二一世紀に入り、戦争や内戦、ISなどの武装勢力の台頭、各国での路上抗議行動の広がりなど、世界各地で動乱が多発している。その結果難民など大規模な人の移動が発生し、特に欧米では反動で排外主義が進行している。二〇二〇年初頭から世界で爆発的な流行を見せた新型コロナウイルス感染症の蔓延は、まさに「グローバルな危機」を体現したものに他ならない。
 現代の「グローバルな危機」は、広範な波及性や連鎖性、唐突さといった点で、従来の危機と異なる新しい側面を持つ。その多くが、特に非欧米の非国家主体など、これまでの学問では十分に「見え」なかった要素によって起こされており、それゆえに、特に欧米の国家主体を主に分析対象としてきた既存の学問分野では、十分に解明できない。それは、既存の学問分野が「主語」のある、主体の明確な出来事しか分析対象とせず、伝統的、古典的な主体中心主義の視座を取っているからである。
 それに対して、本叢書が提唱する「グローバル関係学」は、主体よりもその間で交錯するさまざまな「関係性」を分析することに重きを置く。そこでは、さまざまな関係性が双方向、複方向的に交錯し連鎖するなかで出来事が起きると考え、そしてそうした関係性の網のなかにこそ、澱や瘤のように「主体」が浮き彫りになると考えるのである。
 「グローバル関係学」とは、狭い範囲の地域共同体から超領域的グローバルなネットワークまで、非欧米世界を含めた世界を総体として把握する視座を確立し、主体中心的視座で「見えなかった/見なかった」ものを、関係中心的視座から「見える」ようにすることを目的とする。

関連研究計画:B01 規範とアイデンティティ