「グローバル関係学」」第二回若手研究者報告会終了 (2月13日配信)

2018年12月8-9日、京都大学に於いて開催された「グローバル関係学」第二回若手研究者報告会は盛会のうちに終了しました。

今回の若手研究者報告会では、立本先生(京都大学名誉教授)に基調講演をお願いし、グローバルに観察される価値の葛藤をいかにして共生させていくべきかに関する興味深い世界観をお話しいただけました。また研究代表の酒井啓子教授によるグローバル関係学に関するショート講演により、「グローバル関係学」の視座と個別研究とを結び付けていくべきとの思いが参加者で共有されました。個別報告では、21世紀国際関係の様々な側面における変容、とりわけグローバルな構造変化や技術革新をふまえた意欲的な研究の報告が続きました。たとえば、SNSなどのコミュニケーション技術の革新が国語の使用や難民の社会的ネットワークに与える影響、グローバルなレベルでのイスラーム主義の拡大が国家の宗教管理体制に変容を迫る事例についての興味深い報告がありました。コミュニケーション技術の革新は、新たな社会科学の方法論も生み出している。本報告会でも、位置情報付きの言語別ツイートのビッグデータにもとづく各民族のネットワークの抽出やセグレゲーション状況のディテクションといった新しい研究の展開が紹介されました。

また、大国間のパワートランジションや大国の世界戦略といった一見古典的なトピックについても、20世紀型の大国間関係と21世紀とで何が違うのか、また、既存の国際関係論パラダイムでは説明できない現象はないかといった切り口での議論が持たれ、グローバル関係学のパラダイム構築の可能性が検証されました。さらに「ナショナリズム」、「多文化主義」、「アイデンティティー」といったキーワードの元に事例研究の報告および討論が闊達になされ、個別研究でのアクター(主体)や関係性概念の設定に、全体としての関係学の視点が役立ったという感想も多くいただきました。初日に行われた立本先生のご講演で最後に強調されていた「プラクシス」(実践)を研究者として実行した2日間の研究会合となりました。今後の若手研究者報告会でも、ぜひ全体(関係性の学理)が部分(個別研究)と呼応し、逆に部分が全体を指し示す、という全体=部分の相互依存性を念頭に、ぜひ「我こそはグローバル関係学の主役」(立本先生からのお言葉)という意気込みで研究報告がなされていくことを期待しております。


【参加者の声】(抜粋)

二日間の若手研究者報告会を通し、国際関係学、政治哲学、人類学、国際保健医療学など、様々な研究分野・視点から共通の課題である、現代のグローバル社会における複雑な関係性に焦点を当てた発表を拝聴し、「グローバル関係学」をより具体的・多角的に捉えることができました。この度はこのような大変貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。

(山下瑶子)

社会の様々な事象を実証的に、あるいは規範的に論じる上で、関係に着目する重要性を再認識しました。同時に、専門外の地域やテーマを扱う発表を数多く聞くことで、関係の扱い方の多様性を知ることができました。単に関係を扱うということから先に進んで、どのように関係を扱うのかということを意識するきっかけを得られたように思います。

(宮地隆廣)

発表内容に関するコメントは、大変勉強させて頂きました。また、様々な方法論や越境分野の報告者の発表については、大変興味深く聞かせて頂きました。有意義な報告会を開催いただき、ありがとうございました。今回の報告会の内容を踏まえて、さらに良い研究につなげていこうと思っています。

(牧野冬生)

色々な分野の発表を聞けて、大変勉強になりました。グローバル関係学はこれほど広い分野で適応されていたことで、本当に驚きました。自分の研究を整理して、また機会があれば、是非再チャレンジさせていただきます。

(黄國誦)

このような貴重な報告会に参加させていただき、真にありがとうございます。
研究領域的には必ずしも近いわけではない人々の発表を聞きことができ、大変刺激になりました。今後は、自身の研究とグローバルということをもっと真剣に考えていきたいと思います。

(岩倉洸)

とても貴重な発表の機会でした。コメンテーターや他の研究者から頂いたアドバイスを活用し、今後研究の改善につながると思います。また他の研究者たちの興味深い発表を聞いて、たいへん勉強になりました。いろんな分野の発表者がいて、普段行っている学会とちょっと違って、新鮮なアイデアがたくさんあって、とても刺激になりました。

(謝志海)

多彩な顔ぶれとテーマが集った学際的でエキサイティングな二日間となりました。討論者やフロアの先生方も千両役者揃いで、各報告に対するコメントや質問に大いに学ばせていただきました。拙報告についても、普段自分が所属しているような学会ではおそらく聞くことができないような重要なコメントと批判を頂戴して、大変勉強になりました。歴史学と国際関係論をはじめとする諸分野の狭間で自分が闘うべき戦線の所在が見えてきたような気がしています。このような機会を与えていただきましたこと、代表の酒井先生をはじめとする運営の皆様に感謝しています。ありがとうございました。

(小阪裕城)

今回の研究報告に向けて自分の研究に改めて向き合い,今後の研究の方向性に対して示唆を得ることが出来ました。特に,アクターや概念の設定に関係学の視点が役立ちました。また,適切な討論者を付けてくださり,大変有意義なコメントを頂けました。今後,今回得られた示唆を研究に生かしてゆきたいと思います。

(佐藤裕視)

The conference was well organized and located in an excellent venue.
Participants to the conference, and presenters had sufficient time to present, listen and reply to questions from the audience and the floor manager.
Thanks to Sakai sensei, I received constructive criticism.
Also, there were available all technical needs for PPTs and remote.
In the stage previous to its holding, the staff, such as Sera san, were kind and cooperative in arranging for two Obento boxes: One Fish and the other, chicken.
The "dinner-party" after the first day, was very nice, simple and Oishi! Thanks for organizing it!

(Marwa Ahmad)

この度は、グローバル関係学若手研究者報告会に参加させていただき、ありがとうございました。報告会では、貴重なコメントやアドバイス等を頂き、更に所属や専門分野を越えた多様な報告や議論を伺うことができ、大変勉強になりました。こうした分野を越えた議論から、自身の研究における新たな論点の示唆も得られ、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。

(河村真実)

今回が初めての研究報告でしたが、得難い経験となりました。今後の研究について枠組み、方向性、整理の仕方などについて、参加しておられる研究者の方々から有益なコメントやアドバイスをいただくことができ、励みになりました。また、普段知り合う機会が少ない他分野の方々と交流できたことも、刺激になりました。

(細井友裕)

これまでほとんどお話しする機会がなかった、中東やアフリカの地域研究の方とお話しできるなど、とても有意義な研究会でした。また、参加したいです。

(佐藤信吾)

関連研究計画:総括班

(配信日:2019年2月13日)
(更新日:2019年2月21日)