岩波叢書「グローバル関係学」シリーズ刊行開始記念Book Launch Series 5 「第六巻『移民現象の新展開』を語る」開催のお知らせ (1月16日配信)

岩波叢書「グローバル関係学」シリーズ刊行開始記念Book Launch Series 5
第六巻『移民現象の新展開』を語る

開催日時:2021年1月29日(金)15:00~17:00
開催場所:Zoomによるオンライン開催

【司会】 松尾昌樹(宇都宮大学・第六巻編集)
【開会の挨拶】 森千香子(同志社大学・第六巻編集)

【本(第六巻)の執筆者と構成】

  • 序章 一元的な移動のあり方・捉え方を問い直す(松尾昌樹・森千香子)
  • 第1部
  • 第1章 湾岸産油国のフィリピン人移民戦略とネットワーク(細田尚美 長崎大学)
  • 第2章 インド人移民社会の形成―「南」で最大の移民送出国に関する考察―(S・イルダヤ・ラジャン 開発学研究センター教授、アシュウィン・クマール 開発学研究センター リサーチ・アソシエイト)
  • 第3章 湾岸アラブ諸国の移民社会―非包摂型移民制度の機能―(松尾昌樹 宇都宮大学)
  • 第4章 東南アジアの移民受入国―移民政策と国民 移民関係の類型化―(石井由香 静岡県立大学)
  • 第5章 日常的に越境移動する人々をめぐる政治的実践―南部アフリカにおける事例から―(中山裕美 東京外国語大学)
  • 第6章 アフリカと中国を結ぶ人とモノ―ナイジェリアの中国人コミュニティとホスト社会の関係―(松本尚之 横浜国立大学、川口幸大 東北大学)
  • 第2部
  • 第7章 「北からの移動」という視点の転換―移民研究の新たな展望とその意義―(森千香子 同志社大学)
  • 第8章 南アジアの中古品貿易業―アフガニスタン人移民企業家のトランスナショナルな移動―(福田友子 千葉大学)
  • 第9章 ケア労働者の「北-北」移動―豪州における日本人若年女性の低賃金労働とその課題―(大石奈々 メルボルン大学、小野綾 日本アセアンセンター、ロイヤルメルボルン工科大学)
  • 第10章  北から南への移動―日本からマレーシアへの国際退職移住・ライフスタイル移住―(小野真由美 ノートルダム清心女子大学)

※これらの章のうち、いくつかの章の内容、特徴について、当日ご報告いただきます。

*1月27日までに、下記のフォームから参加登録をお願いいたします。登録を頂いた方宛に、担当者よりzoomウェビナーへの参加手続き情報をお送りいたします。

岩波叢書「グローバル関係学」シリーズ刊行開始記念 Book Launch Series 5 参加登録 (google.com)
 https://forms.gle/tg5SyHe4GagaDS9F7

問合せ: 千葉大学グローバル関係融合研究センター内事務局
Email: glblcrss*chiba -u.jp(*を@に代えてご利用ください)

「グローバル関係学」シリーズ刊行にあたって~
「グローバル関係学」とは

酒井啓子

 二一世紀に入り、戦争や内戦、ISなどの武装勢力の台頭、各国での路上抗議行動の広がりなど、世界各地で動乱が多発している。その結果難民など大規模な人の移動が発生し、特に欧米では反動で排外主義が進行している。二〇二〇年初頭から世界で爆発的な流行を見せた新型コロナウイルス感染症の蔓延は、まさに「グローバルな危機」を体現したものに他ならない。
 現代の「グローバルな危機」は、広範な波及性や連鎖性、唐突さといった点で、従来の危機と異なる新しい側面を持つ。その多くが、特に非欧米の非国家主体など、これまでの学問では十分に「見え」なかった要素によって起こされており、それゆえに、特に欧米の国家主体を主に分析対象としてきた既存の学問分野では、十分に解明できない。それは、既存の学問分野が「主語」のある、主体の明確な出来事しか分析対象とせず、伝統的、古典的な主体中心主義の視座を取っているからである。
 それに対して、本叢書が提唱する「グローバル関係学」は、主体よりもその間で交錯するさまざまな「関係性」を分析することに重きを置く。そこでは、さまざまな関係性が双方向、複方向的に交錯し連鎖するなかで出来事が起きると考え、そしてそうした関係性の網のなかにこそ、澱や瘤のように「主体」が浮き彫りになると考えるのである。
 「グローバル関係学」とは、狭い範囲の地域共同体から超領域的グローバルなネットワークまで、非欧米世界を含めた世界を総体として把握する視座を確立し、主体中心的視座で「見えなかった/見なかった」ものを、関係中心的視座から「見える」ようにすることを目的とする。