研究の構造

  研究のキーワードはコミュニティです。コミュニティの定義はさまざまあるかと思いますが、「人と人との継続的なコミュニケーションが成立している空間で成立する社会単位である」というような大まかな概念整理で研究を進めていくことになります。コミュニティの定義自体についても研究者の中で、さまざまな違いというものはあろうかと思いますが、コミュニケーションをキーとした社会という大まかな概念整理の下で、以下の4つの観点で研究を進めていこうというプログラムになっております。

研究の構造


 第一が、コミュニティを支える経済という観点です。コミュニティ・ビジネス、コミュニティ金融、あるいは社会的起業家であったり地域通貨であったり、そういったコミュニティの中でのコミュニケーションを活発にさせるような、あるいはそのようなコミュニケーションを前提としたビジネスのようなものが、日本の中でも広がりを見せつつあるのではないかと思うのです。そのようなものについて社会的にどのように位置づけていくのか、社会的意義を明確化して政治的にどのように位置づけていくのかといった検討を進めていきたいと考えております。

 二つ目が、コミュニティを支えるエネルギーという観点です。二酸化炭素あるいは温室効果ガスを2050年までに半減以上しなければならないというような政治合意が図られつつある状況です。COP15の「コペンハーゲン合意」では、世界全体としての長期目標として産業化以前からの気温上昇を2度以内に抑えるという内容が盛り込まれました。2℃以上上げないということであるならば、単純に計算していくと、2050年に温室効果ガスを半減以上しないといけないという帰結になります。

 そのような中で、いかにして化石燃料に依存せずに、太陽エネルギー基盤の経済を作っていくのかということが大きな課題です。図1には「永続地帯」研究という言葉が出ておりますが、これは私が現在進めているもので、地域分散的にどの程度再生可能エネルギーが得られているのだろうか、それによって地域のエネルギー需要をどの程度満たせるのだろうかということについて、市区町村ごとに見ていくという研究を指します。そのようなものをベースにしながら、持続可能なエネルギー供給を確保したコミュニティをどのように構築していくのかという観点も本研究プロジェクトの中に入れていきたいと考えております。

 第三が、コミュニティの生活の質あるいは「ソーシャル・クオリティー」という観点です。地域の社会保障のあり方や、あるいは生活の質を確保するための枠組みといったものについて広井先生がさまざまな提言をされているところです。そのような生活の質あるいは「ソーシャル・クオリティー」について、どのように把握をしていくのかという指標の開発についても、大石先生と小川先生が中心となって、アジアの他の国とも足並みを揃えながら、国際比較可能なアンケート調査を進めている状況です。そのような生活の質の観点も重要な研究項目のひとつということになります。

 最後に、コミュニティの都市計画という観点です。ソフト面だけではなく、やはりハード面からも持続可能性ということを確保していく必要があります。人口が減少していく中で、いかにしてコンパクトで住みよい都市機能を維持した街を作っていくのかという視点を持って、岡部先生、宮脇先生中心に都市計画の新たな構想を提供していくという研究項目を掲げております。

 以上、コミュニティを支える経済、コミュニティを支えるエネルギー、コミュニティの生活の質、コミュニティの都市計画という四つの視点から研究を進め、環境制約・人口減少下で持続可能なコミュニティを実現していくということが、この研究テーマの内容ということになります。

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